税務調査

相続税調査の実施状況

相続税調査の実施状況

相続税の税務調査は、申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告と想定される事案について実施されます。
国税庁発表資料によると、総申告件数の10%強の割合で実地調査が実施され、その内申告もれ等の非違があった割合は80%を超えています。また、1件当たりの申告もれ課税価格は2,000万円超、1件当たりの追徴税額(加算税含む)は400万円超となっているようです。

相続税調査対象の選定

相続税調査対象の選定

相続税調査対象の選定は、主に次のような観点で行われているようです。

  • ① 課税対象遺産総額が多額

    遺産総額が1億円未満と1億円以上では、明らかに1億円以上の方が調査選定をされる比率が高まります。理由は相続財産が多い場合には、必然的に申告もれ財産があった場合の追徴税額も大きくなりやすいためです。

  • ② 相続税申告書に添付した書類から明らかな非違事項が発見された場合

    相続税申告書には、不動産の評価計算書や金融機関の残高証明書等、相当のボリュームの関係書類を添付します。それらの資料から、申告内容のチェックが行われ、そこで間違いが発見された場合、税務調査の対象とされやすくなります。

  • ③ 預貯金等の通帳の動きに不明瞭な点が多い

    税務署は被相続人のほか相続人等関係者の預貯金等の動きを金融機関に照会して確認することができます。基本的に被相続人の生前の預金は、相続開始の5年前程度までさかのぼって調べられているようです。ここで、不自然な出金や贈与税の申告のない親族への多額の資金移動があると、名義預金の存在や財産隠しによる過少申告が疑われ、税務調査対象とされやすくなります。

  • ④ 資料と申告書の内容が一致しない

    税務署には、金融機関や保険会社から膨大な量の資料が集まっています。不動産登記資料もすべて税務署は収集しています。また、相続税の申告のあった者に対しては個別に金融機関等に照会が行われ、詳細な資料を入手することもあります。
    そうして把握した資料と、申告された財産を突合して著しい差がある場合には、税務調査対象に選ばれやすくなります。

  • ⑤ 申告義務があると認められるのに無申告

    税務署の内部資料の検討等から、申告義務があると認められるのに相続税申告書の提出がない者については、当然税務調査対象に選ばれます。

申告に当たっての留意事項(申告もれとならないように)

申告に当たっての留意事項(申告もれとならないように)

土地・家屋

土地について、実測面積が台帳(登記)面積に相違する場合は実測面積により計算する必要があります。 家屋の建築や隣接地との境界確定等のため測量されている場合は、測量図による実測面積の確認が必要です。
先代名義のまま名義変更がされていない物件や共有物件及び未登記の家屋はありませんか。

先代名義や共有名義物件が申告もれとなる場合があるので注意が必要です。

家屋とその家屋の敷地の所有者は同じですか。

他人から借用している土地の上に家屋を建築し所有している場合には借地権の検討が必要となります。逆に、自己の土地を他人に貸付(借地人が家屋を建築している)ている場合は借地権の控除を検討することになります。

他人から借用している農地はありませんか。また、自己の農地を他人に貸付していませんか。

他人から借用している農地を耕作している場合は耕作権の検討が必要となります。逆に、自己の土地を他人に貸付(賃借人が農地を耕作している)ている場合は耕作権の控除を検討することになります。

有価証券

名義株(被相続人名義ではないが実質は被相続人に帰属する有価証券)はありませんか。

被相続人以外の名義であっても実質的には被相続人の支配下にあれば(例えば被相続人が配当金を受領している株式など)相続財産となります。

端株はありませんか。

株式配当金支払通知書や預貯金通帳の配当の入金内容の確認が必要です。

現金

相続開始日に保管していた現金残高はいくらでしたか。

死亡直前に預貯金の出金や解約などによって引き出した現金は、葬儀の費用やその後の法事の費用等に費消され、相続税の申告の時期には現金がないため申告もれとなってしまう場合があるので注意が必要です。

預貯金

名義預金(被相続人名義ではないが実質は被相続人に帰属する預貯金)はありませんか。
家族名義などの預貯金で、その原資は被相続人から発生しており、管理及び運用状況によって被相続人に帰属すると認められる財産です。課税当局が税務調査において問題としてよく取り上げています。
生命保険契約に関する権利

保険契約における被保険者が家族等で保険料を被相続人が負担している場合には、被相続人に相続が発生しても、まだ保険事故(保険金の支払の事由がない)が発生していませんが、このような場合には「生命保険契約に関する権利」を取得したことになります。その権利の額は、相続開始日に当該保険契約を解約した場合の解約返戻金相当額です。

保険料を負担していた被相続人に相続が発生しても、保険会社から保険金の支払がありませんので申告漏れとなってしまうことに注意が必要です。保険料の支払は口座引落しが多く、被相続人の預貯金の口座から引き落としされており、相続開始により保険会社からの保険料の支払がないことから判明することもありますので確認が必要です。

親族への贈与の有無

(名義預金ではなく)生前被相続人から株式や現金などの財産の贈与はありませんでしたか。

被相続人から生前中に贈与された現金・預貯金等については、生前の被相続人の預貯金の出金から親族への預貯金の入金の有無等の確認(相続開始前6年間程度の期間における入出金の確認)が必要です。この部分も、課税当局が税務調査において問題としてよく取り上げています。

※贈与は贈与(あげる)する人と受贈(もらう)される人の両方の意思が合致して契約が成立し、受贈者はもらった財産は自由に管理・使用していることで、贈与者の管理下にはありません。

その他財産

車両、書画、骨董、ゴルフ会員権のほか貴金属(金地金)などの財産についても相続財産となりますので、申告もれとならないように気をつける必要があります。

相続財産に加算される被相続人からの贈与財産価額

相続人が相続時精算課税制度を適用して、贈与税の申告をしている場合は、すべて加算されますので、贈与税の申告書等の確認が必要です。
贈与税の申告書を提出したことを失念していて、後から税務署より指摘を受け、追徴課税される例がありますので注意が必要です。
相続人が、暦年課税により贈与を受けている場合は、相続開始前3年以内の価額を加算します。
相続税の申告書の提出の有無(基礎控除以下)にかかわらず加算が必要です。

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